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薄毛は病院の何科に行く?皮膚科とAGA専門クリニックを比較

薄毛は病院の何科に行く?皮膚科とAGA専門クリニックを比較
2025.12.01
 

薄毛が気になり始めても、「どの病院に行けばいいのか分からない…」と迷う人は少なくありません。

受診先の代表的な選択肢としては、皮膚科とAGA専門クリニックがありますが、治療方針や費用、対応できる症状などが異なります。

本記事では、両者の違いを分かりやすく比較し、「自分の状況ならどちらに行くのが最適なのか」判断できるよう解説します。

初めての受診で迷わないために、ポイントを押さえておきましょう。

監修者

浦部 一大朗

ヴィタリス製薬株式会社
代表取締役 浦部 一大朗

大手医療用医薬品製薬メーカーに4年在籍。高血圧治療薬や糖尿病治療薬といった生活習慣病薬から抗がん剤まで幅広い医薬品の情報提供に携わっておりました。現在は、家業である一般用医薬品メーカーヴィタリス製薬4代目社長として就任。

・東京薬科大学卒業。薬剤師資格保有
・大手製薬会社で医薬情報提供者(MR)として従事
・2023年7月よりヴィタリス製薬入社
・2024年10月より4代目代表取締役に就任

薄毛で受診する診療科の種類と選び方

薄毛が気になり始めたとき、どの診療科に相談すればいいのか迷う方は少なくありません。薄毛の原因は多岐にわたるため、症状に応じて適切な診療科を選ぶことが大切です。

一般的に薄毛治療は皮膚科やAGA専門クリニックで対応していますが、甲状腺疾患・栄養障害・ストレスなどが原因の場合は、内科や心療内科での治療が必要になることもあります。

原因を見極めて正しい診療科を選ぶことで、より効果的な治療を受けられるでしょう。

皮膚科が適している薄毛の症状

皮膚科は皮膚の病気全般を扱う診療科です。毛髪や頭皮は医学的に「皮膚」として分類されるため、薄毛も皮膚科で対応できる症状のひとつとされています。

頭皮にかゆみや炎症、赤みがある場合は皮膚科での受診が適しています。

【皮膚科に適した症状の例】

  • 脂漏性皮膚炎※1
  • 円形脱毛症※2
  • 牽引性脱毛症※3
  • 頭皮に異常な脂分がみられる場合

※1 皮脂を多く分泌する部分に起きやすい皮膚炎。頭皮に発症すると薄毛の原因となることがある
※2 円形の脱毛斑ができる脱毛症。自己免疫の過剰反応が原因と考えられている
※3 髪を引っ張る髪型やエクステ、ヘアアイロンなどで引き起こされる脱毛症。頭皮や毛根に物理的な負担がかかり、血行不良も引き起こすことが原因

AGAの場合も皮膚科で基本的な治療を受けることは可能ですが、治療薬の種類が限られていたり、発毛治療を積極的に行っていない医療機関もあります。

より専門的な治療を希望する場合はAGA専門クリニックを検討するのも選択肢となります。

内科や心療内科が適している症状

薄毛、脱毛と聞くと皮膚科のイメージが強い方が多いと思いますが、実は体の内部に原因があることも珍しくはありません。

その場合は、内科や心療内科を受診する必要があります。

内科、心療内科がおすすめの代表的な薄毛、脱毛症状を伴う疾患についてご紹介しますので、参考にしてください。

一般的に内科受診が適しているのは、全身の病気が薄毛の原因となっている可能性がある場合です。

甲状腺機能異常症甲状腺ホルモンの分泌に異常が生じ、全身にさまざまな症状が現れます。甲状腺機能の亢進または低下どちらの場合でも薄毛を発症する可能性があるとされています。
糖尿病高血糖状態が続くことで血管や神経にダメージが生じ、血流不全などから薄毛を引き起こすことがあります。
抗がん剤や一部の薬副作用として脱毛が生じることがあります。抗がん剤のほか、抗うつ薬・抗凝固薬・ビタミンA誘導体(イソトレチノイン)などが挙げられます。薬の影響が疑われる場合は、自己判断で中止せず、処方医に相談することが大切です。
【内科の受診が適した症状】

ストレス強いストレスにより自律神経のバランスが乱れると、頭皮環境の悪化や血行不良につながり、薄毛の一因となる可能性が指摘されています。
【診療内科・精神科の受診が適した症状】

日常生活で過度のストレスを感じている場合は、医療機関で相談することで、ストレスへの対処と薄毛改善の双方をサポートしてもらえる場合があります。

AGA専門クリニックが適している症状

AGAは男性ホルモンが影響する進行性の脱毛症で、生え際の後退や頭頂部の薄毛が徐々に進行していく特徴があります。

遺伝が影響していることも多く、生え際が後退してきた、頭頂部が薄くなってきた、家族に薄毛の人が多いといった場合にはAGAが疑われます。

AGAは放置すると進行し続けるため、自然に完全に回復することは一般的には期待できません。

早期に治療を開始することで、進行を抑えたり、発毛をサポートできる可能性があります。

AGA専門クリニックでは内服薬・外用薬のほか、注入療法や植毛など幅広い治療の選択肢があり、AGAに精通した医師が治療を担当するため、本格的な治療を希望する場合に適しています。

「どんなクリニックがあるのか知りたい」という方に向けて、各院の特徴やサービス内容をまとめた記事も用意しています。比較しながら検討したい方は、AGAクリニックを紹介したこちらの記事をご覧ください。

>>AGA治療オンライン厳選比較21選【保存版】

皮膚科での薄毛治療の内容と特徴

皮膚科では皮膚の病気全般を扱っており、薄毛もその対象となる症状のひとつです。

頭皮の状態を診察し、必要に応じて検査を行いながら、症状に合わせた治療法を提案していきます。皮膚科でのAGA治療は、主に薬物療法が中心となります。

ここからは、皮膚科で一般的に行われている治療内容について詳しく見ていきましょう。

皮膚科で処方される薬の種類

皮膚科で処方されるAGA治療薬には、主にフィナステリド、デュタステリド、ミノキシジル外用薬があります。

【フィナステリド】

AGA治療薬として国内で最初に承認された内服薬です。

5α還元酵素の働きを抑制することで、脱毛の原因物質であるジヒドロテストステロン(DHT)の産生を抑えます。

プロペシアという商品名でも知られており、AGAの進行を抑える効果が期待できます。1日1錠を服用し、一般的には3~6ヶ月で変化が見られ、6ヶ月~1年程度で効果判定されます。

【デュタステリド】

フィナステリドよりも強力なDHT抑制効果を示す内服薬です。

5α還元酵素のⅠ型とⅡ型の両方を阻害するため、フィナステリドで効果が十分に得られなかった場合に使用されることがあります。ザガーロという商品名で処方されています。

【ミノキシジル外用薬】

頭皮に直接塗布する外用薬です。

頭皮の血管を拡張し血流を促進することで、毛母細胞に栄養を届けやすくし、発毛を促す効果が期待できます。

日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨度Aとされており、1日2回の塗布が一般的ですが、製品によっては1日1回タイプもあります。

これらの治療薬は、症状や体質、副作用のリスクなどを総合的に判断しながら、単独または組み合わせて処方されます。

効果のあらわれ方には個人差があるため、医師の診察のもとで継続的に経過を見ながら治療を進めることが大切です。

皮膚科を受診するメリットとデメリット

皮膚科で薄毛治療を受けるメリットとしては、まず通いやすさが挙げられます。厚生労働省の統計によると、多くの医療機関で皮膚科が標榜されています。

自宅や職場の近くで見つけやすいため、継続的に通院しやすい点は大きなメリットです。

また、日本皮膚科学会が作成したガイドラインに基づく標準的な治療を受けられるため、信頼性が高いといえます。AGA以外の脱毛症にも対応しているため、円形脱毛症や脂漏性皮膚炎など、幅広い原因の薄毛治療が可能です。

一方で、皮膚科は湿疹やアトピー性皮膚炎などさまざまな皮膚疾患を診療するため、施設によってはAGA治療の実績が限られる場合もあります。

薬物療法が中心となることが多く、育毛メソセラピーや植毛といった専門的な治療は行っていないことがあります。

また、問診と視診のみで治療を開始する医療機関も少なくなく、遺伝子検査や詳細な頭皮検査まで対応していない場合があります。

取り扱う治療薬が限られることもあり、フィナステリド以外やジェネリック医薬品を選べないこともあります。

AGA専門クリニックの治療内容と特徴

AGA専門クリニックは、その名の通りAGA治療に特化した医療機関です。

皮膚科と比較して治療の選択肢が豊富であり、患者一人ひとりの症状や希望に応じたオーダーメイドの治療を受けられます。

AGA専門クリニックでは、薬物療法だけでなく、より専門性の高い治療法を組み合わせることで、AGAの進行抑制だけでなく積極的な発毛も目指せます。

専門性の高い医師による診療と、豊富な治療実績があるのが大きな特徴といえるでしょう。

ここでは、AGA専門クリニックで受けられる治療内容や皮膚科との違いについて解説します。

AGA専門クリニックで受けられる治療の選択肢

AGA専門クリニックでは、内服薬・外用薬による薬物療法に加えて、メソセラピーや植毛など、より専門性の高い治療を受けることができます。

【メソセラピー】

成長因子やミノキシジルなどの有効成分を頭皮に直接注入する治療法です。毛包にダイレクトにアプローチし、血流促進や毛母細胞への栄養補給をサポートすることで、発毛効果が期待できるとされています。

効果を実感するまでには3〜6か月程度かかることが多く、内服薬と併用されるケースもあります。

【植毛】

AGAの影響を受けにくい後頭部や側頭部の毛根を採取し、薄毛が気になる部位に移植する治療法で、定着した毛髪はAGAの影響を受けにくいため、継続的な治療が不要になる可能性があります。

一方で、費用が高額になりやすく、効果を実感するまでに約1年かかるとされています。

また、AGA専門クリニックではミノキシジル内服薬を処方する場合もあります。

国内未承認のため医師の判断のもとで使用されますが、外用薬より効果を実感する人が多いとされる一方、副作用への注意が必要です。

AGA専門クリニックと皮膚科の専門性の違い

AGA専門クリニックと皮膚科の最も大きな違いは、専門性と治療実績の差です。

AGA専門クリニック皮膚科
診療内容・AGA専門クリニックはAGA治療のみに特化
・豊富な症例経験と専門知識を持つ医師が治療にあたる
・皮膚の病気全般を扱う診療科
・AGAよりも湿疹やアトピー性皮膚炎などの治療をメインとしている
在籍医師・皮膚科専門医
・美容外科専門医
・毛髪診断士
・AGAの専門医
・皮膚科専門医
・美容外科専門医
検査内容・問診
・視診
・血液検査
 肝機能やホルモン値を確認
・遺伝子検査
 AGA診断やAGA治療薬の効果を調べる
・問診
・視診
診断方法様々な検査結果の他、遺伝子検査結果を元に診断する場合が多い血液検査や遺伝子検査を行わず、問診・視診のみで診断する場合が多い

上記の他、治療のフォロー体制にも違いがあります。

AGA専門クリニックでは定期的な診察で発毛状況や副作用を確認しながら、薬の種類や濃度を細かく調整するケースが一般的です。

治療経過に応じたきめ細かいサポートを受けたい場合は、AGA専門クリニックの方が適しているでしょう。

薄毛治療の費用相場と保険適用について

薄毛治療を始めるうえで、多くの方が気になるのが費用面です。AGA治療は基本的に保険適用外の自由診療となるため、治療費は全額自己負担となります。

また、治療法や通院先によって費用の幅が大きく変わる点にも注意が必要です。

ここでは、皮膚科とAGA専門クリニックの費用の違いや、保険適用が認められるケースについて詳しく解説します。

皮膚科とAGA専門クリニックの費用の違い

皮膚科なら保険が使えるから治療費が安いのでは?

こんなことを考える方もいるかもしれませんが、実はそうではありません。

医療機関の種類にかかわらず、AGA治療は保険適用外の自由診療となり、治療費は全額自己負担となります。

そのため、皮膚科で治療したからといって費用が安くなるとは限らず、費用面の違いは治療内容にあります。

【皮膚科の費用】

主にフィナステリドやデュタステリドなどの内服薬の処方が中心で、月々4,000円〜10,000円程度が目安です(治療内容によってはより高くなる場合もあります)。

【AGA専門クリニック の費用】

内服薬に加えて外用薬や注入治療など治療の選択肢が豊富になり、内服+外用を併用した場合は月々15,000円〜30,000円程度となるのが一般的です。

初診料や再診料はクリニックによって異なり、初診料は5,000円前後/再診料は1,000〜3,000円程度が相場ですが、無料としているクリニックもあります。

血液検査を行う場合は5,000〜10,000円程度かかるため、初期費用を含めた総額で比較検討することが大切です。

保険が適用される薄毛治療のケース

AGA治療は原則として保険適用外ですが、例外的に保険が適用されるケースが存在します。重要なのは、AGA自体には保険が適用されないという点を理解しておくことです。

保険が適用されるのは、薄毛の原因が別の疾患によるものと診断された場合に限られます。

代表的な例が円形脱毛症で、ステロイド製剤や抗アレルギー薬などによる治療は保険適用となります。また、脂漏性皮膚炎や接触性皮膚炎など、頭皮の炎症が脱毛の原因となっている場合も保険適用の対象です。

これらはあくまでも皮膚疾患の治療であり、AGAとは異なる疾患として扱われます。

まれに、AGA治療と同時に頭皮トラブルを起こしている場合がありますが、この場合も、保険が適用されるのは炎症や感染症など頭皮トラブルに対する治療のみであり、AGA治療そのものは保険適用外です。

頭皮のかゆみや赤みがある場合は自己判断せず、医師の診察を受けることが重要です。

薄毛治療の病院を選ぶときの判断基準

薄毛治療は長期的な継続が前提となるため、病院選びは慎重に行う必要があります。

費用や治療内容だけでなく、通いやすさや医師の専門性など、総合的な視点から判断することが大切です。

効果が現れるまでには3〜6ヶ月ほどかかることが多いため、「継続できる環境かどうか」を重視するのがポイントです。

ここでは、病院選びで特に確認しておきたいポイントについて解説します。

通院のしやすさと治療の継続性

AGA治療は継続することで効果を実感できる治療です。

途中でやめてしまうと、薄毛の症状が再び進行する可能性があるため、無理なく通院できる環境を整えることが何より大切です。

クリニックを選ぶ際のポイントをまとめましたので、参考にしてください。

【通いやすい立地・アクセスかどうか】

自宅や職場から通いやすい場所にあるかは、継続のしやすさに直結します。

  • 自宅・職場から近いか
  • 最寄り駅からアクセスしやすいか
  • 通勤経路にあるか(→ 仕事帰りに立ち寄りやすく継続性アップ)

【診療時間・予約の取りやすさ】

診療時間が生活スタイルと合っているかも重要です。

  • 平日夜・土日祝日に受診できるか
  • 予約が取りやすいか(混雑で通えなくなるリスクの回避)

【オンライン診療の活用】

最近はオンライン診療に対応するクリニックも増えています。通院が難しい日でもスマホやPCで診察を受けられるため、治療継続の大きな助けになります。

  • 忙しい日でも受診できる
  • 交通費を抑えられることもあり、費用面でもメリット

【プライバシーへの配慮】

薄毛はデリケートな悩みのため、環境面の配慮も大切です。

  • 完全個室制
  • 予約制で待合室に人が多くない
  • 他の患者と顔を合わせにくい設計

こうした点が整っているクリニックは、精神的ストレスも少なく、結果的に通院を継続しやすくなります。

取り扱っている治療の種類を確認する

薄毛の進行度や体質によって効果的な治療は異なります。治療の選択肢が豊富なクリニックであれば、自分に合った方法を提案してもらいやすくなります。

代表的なAGA治療にをご紹介しますので、クリニック選びの参考にしてください。

【薬物療法(内服薬)】

基本的な治療はフィナステリド、デュタステリド(進行抑制)、ミノキシジルタブレット(発毛促進)などの薬物療法になります。

  • 複数薬を組み合わせて処方できるクリニックが望ましい
  • ジェネリックの取り扱いがあれば費用を抑えられる

【薬物療法(外用薬)】

ミノキシジル外用薬を頭皮に直接塗布する方法で、内服薬との併用で相乗効果が期待できます。

市販品の濃度上限は5%ですが、医療機関であれば濃度の変更が可能です。

【注入療法・植毛などの高度治療】

育毛メソセラピー、HARG療法、植毛手術などがあり、発毛因子などを直接注入するため、薬物療法より高い効果が期待されています。

専門設備と技術が必要なため、実績のあるAGA専門クリニックを選ぶことが重要です。

【初回カウンセリング】

初回カウンセリングでは、以下の点を確認すると良いでしょう。

  • 選択できる治療の種類
  • 症状に応じた治療プラン
  • 治療の変更・追加が可能か

治療は一つに絞る必要はありません。

一つの方法で十分な効果を得られなかった場合でも、他の治療法を試せる環境が整っているクリニックであれば、諦めずに治療を続けやすくなります。

を必ず確認しておきましょう。

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