シャンプーで抜け毛が多いのはなぜ?見逃せない5つの原因
シャンプー中に排水口を見ると、予想以上の抜け毛に気づくことがあるかもしれません。髪を洗うたびに抜け毛が増えていると、不安に感じるのは当然のことです。
本記事では、シャンプー時の抜け毛が増える5つの原因を紹介します。洗髪方法や製品選び、生活習慣など、見落としがちなポイントを確認してみましょう。
原因が分かれば、適切な対策を始められるでしょう。健康な髪を保つための第一歩として、ぜひ参考にしてください。
監修者

ヴィタリス製薬株式会社
代表取締役 浦部 一大朗
大手医療用医薬品製薬メーカーに4年在籍。高血圧治療薬や糖尿病治療薬といった生活習慣病薬から抗がん剤まで幅広い医薬品の情報提供に携わっておりました。現在は、家業である一般用医薬品メーカーヴィタリス製薬4代目社長として就任。
・東京薬科大学卒業。薬剤師資格保有
・大手製薬会社で医薬情報提供者(MR)として従事
・2023年7月よりヴィタリス製薬入社
・2024年10月より4代目代表取締役に就任
シャンプーで抜け毛が多いと感じる理由
洗髪のたびに指に絡まる髪の毛や、排水口に見られる抜け毛が増えていると、髪の健康に何らかの問題があるのではないかと心配になることもあるかもしれません。
実際、シャンプー時に抜け毛が増えることには、いくつかの理由があります。シャンプー中の抜け毛は、必ずしも異常ではありません。むしろ、1日に抜ける髪の毛の大半がシャンプー時に集中するのは、ごく自然な現象とされています。
しかし、正常な抜け毛なのか、それとも何らかの対策が必要なサインなのかを見極めることが大切です。ここでは、1日の正常な抜け毛の本数や、シャンプー時に抜け毛が目立ちやすい理由について詳しく解説します。
1日の抜け毛は50〜100本が正常範囲
健康な人でも、髪の毛は毎日一定の本数が抜け落ちていきます。
日本人の平均的な毛髪本数は約10万本といわれています。そのうち、1日で50〜100本程度の髪の毛が抜けるのは、頭髪全体で見ると約0.1%にすぎません。
この本数には個人差があり、もともとの毛量が多い方や髪が長い方は、同じ本数でも多く感じることがあります。100本という数字はあくまで目安であり、この範囲を少し超えたからといってすぐに異常と断定するものではありません。
髪の毛には「ヘアサイクル」と呼ばれる周期があり、成長期、退行期、休止期の3つの段階を経て自然に抜け落ちます。毛髪全体の約9割は成長期にありますが、残りの約1割は休止期を迎え、自然に抜け落ちる準備をしています。シャンプー時に抜ける髪の毛の多くは、この休止期を迎えた髪です。
季節によっても抜け毛の本数は変動し、特に夏から秋にかけては抜け毛が増える傾向にあります。
夏の紫外線ダメージや夏バテによる栄養不足、汗による頭皮環境の悪化などが影響していると考えられています。この時期は1日あたり200本前後抜けることもありますが、一時的なものであれば特に心配する必要はありません。
シャンプー時に抜け毛が目立ちやすい3つの理由
1日に抜ける髪の毛のうち、約半数から6割程度がシャンプー時に集中しているとされています。たとえば、1日の抜け毛が100本程度であれば、シャンプー中に30〜60本程度の髪の毛が抜けるのは正常な範囲内といえます。
【シャンプー時に抜け毛が目立ちやすい理由】
- すでに抜けた髪の毛が洗い流される
休止期に入った髪の毛は、頭皮に残った状態で自然に抜け落ちる準備をしています。
シャンプー時にこの髪の毛が洗い流されることが多いため、抜け毛が集中しやすくなります。 - 成長が終了した髪の毛が抜けやすくなる
シャンプーによる物理的な刺激で、成長が終わった髪の毛が自然に抜け落ちやすくなることがあります。 - 排水溝に溜まった抜け毛を目視で確認できる
普段は気づかない抜け毛でも、シャンプー時には排水溝に集まり、視覚的に多く感じることがあります。
さらに、1日中髪の毛を束ねていた場合や、1日おきにシャンプーをしている場合は、日中にあまり髪の毛が落ちないため、シャンプー時に一気に抜け毛が集中することがあります。これも正常な抜け毛の範囲内であり、過度に心配する必要はありません。
シャンプーで抜け毛が多くなる5つの原因
シャンプー時の抜け毛が正常な範囲を超えているなら、何らかの原因が潜んでいる可能性があります。
抜け毛が増える原因は、使用しているシャンプーの成分や洗い方の問題から、ストレスや生活習慣の乱れ、さらには脱毛症まで、実にさまざまです。
原因を特定できれば、適切な対策を講じることができます。シャンプー時に抜け毛が増える可能性がある5つの原因を見ていきましょう。
原因①頭皮に合わないシャンプーを使っている
使用しているシャンプーが自分の頭皮や髪質に合わない場合、抜け毛が増えることがあります。
シャンプーには界面活性剤と呼ばれる洗浄成分が含まれており、これが頭皮の皮脂汚れを落としてくれますが、洗浄力が強すぎると頭皮の環境を悪化させることがあります。
【界面活性剤とは】
本来は混ざり合わないもの同士を結び付ける作用をする物質の総称で、たくさんの種類があります。天然の油脂から作られている刺激の少ない界面活性剤もありますが、化学合成された高級アルコール系界面活性剤と呼ばれるものが配合されているのが一般的です。
特に乾燥肌、敏感肌、アトピー体質の方は、シャンプーに含まれる成分による刺激を受けやすいため注意が必要です。
頭皮がつっぱる、ヒリヒリする、洗った直後にベタつく、ブツブツや頭皮湿疹ができるといった症状が現れた場合も、シャンプーの見直しを検討しましょう。
原因②ストレスや睡眠不足が影響している
強いストレスを抱えている方や、睡眠不足が続いている方は、抜け毛が増えやすい傾向にあります。
ストレスを感じると、自律神経のバランスが乱れ、交感神経が優位になります。その結果、頭皮の毛細血管が収縮して血行不良が生じます。
睡眠不足も薄毛の原因となります。睡眠不足に陥ることで、成長ホルモンの分泌量が減少し、毛母細胞の分裂が抑制されることがあります。
また、睡眠中は副交感神経が優位になり、血管が広がって血行が良くなりますが、睡眠時間が短いと血流が悪くなり、毛根に栄養が届きにくくなります。
さらに、乱れた食生活や睡眠不足も髪の成長に悪影響を与えます。頭皮環境の悪化により、シャンプー中に抜け毛が増えたと感じることは十分にあり得るでしょう。
原因③間違った洗い方で頭皮に負担をかけている
頭皮に負担をかける洗い方も抜け毛につながるため、避けましょう。
何も考えずにガシガシ洗ってしまうと、髪の毛が絡まり、絡まった状態で引っ張られ、切れ毛や抜け毛の原因になってしまいます。
さらに、激しい洗い方は必要な皮脂まで洗い流してしまうため、皮脂分泌のバランスが崩れて頭皮の乾燥やかゆみを引き起こす恐れがあります。
こうした頭皮環境の悪化が、抜け毛につながると考えられます。
原因④季節の変わり目による一時的な増加
季節の変わり目、とくに夏から秋にかけては抜け毛が増えやすくなるとされています。
抜け毛の本数は一日あたり50〜100本までが正常ですが、秋になると200〜300本まで増えることもあります。
秋に抜け毛が増える原因は、夏の紫外線ダメージが秋に現れはじめることや、ホルモンバランスや自律神経が乱れやすくなること、さらには動物の換毛期の名残などが挙げられます。
季節的な抜け毛は一時的なものであり、時間の経過とともに徐々に落ち着いていきます。
原因⑤何らかの脱毛症が関係している
多量の抜け毛がいつまで経ってもおさまらない場合は、何らかの脱毛症である可能性が考えられます。
成人男性であれば、まずはAGAを疑います。AGAは男性ホルモンや遺伝が関与する脱毛症で、生え際と頭頂部を中心に薄毛が広がるのが特徴です。
AGAは進行性の脱毛症なので、何もしなければ薄毛は少しずつ進んでいきます。
治療の開始が早ければ早いほど毛根がまだ生きている状態で治療できるため、改善の効果を実感しやすくなります。
シャンプー中の抜け毛だけでなく、普段から抜け毛が目立つようであれば、脱毛症の可能性も考えられます。抜け毛が急に増え、2〜4週間以上改善しない場合や、円形の脱毛斑がある場合は、早めに専門医に相談することをお勧めします。
注意が必要な抜け毛かどうかの見分け方
シャンプーの際の抜け毛が多かったとしても、すべてが異常とは限りません。髪は成長期・退行期・休止期を繰り返しながら自然に生え変わっており、1日に50~100本程度の抜け毛は正常の範囲内です。
しかし、洗髪時に指に絡みつく抜け毛が急に増えたり、排水口に短期間で大量の髪が溜まるようになったりした場合は、何らかの異常が起きているサインかもしれません。
では、正常な抜け毛と異常な抜け毛をどう見分ければよいのでしょうか。
正常な抜け毛の2つの特徴
正常な抜け毛には、見た目で判断できる明確な特徴が2つあります。
①毛根の形状
健康な抜け毛の毛根は白っぽく、丸みを帯びてふっくらと膨らんでいます。この膨らみは、毛根が成長期をしっかり終え、退行期から休止期を経て自然に抜け落ちた証です。
②髪の太さと長さ
正常な抜け毛は一定の太さがあり、ある程度の長さまで成長しています。毛根には半透明の「毛根鞘」と呼ばれる組織が付着していることもありますが、これは髪と頭皮をつなぎとめている組織なので心配いりません。
ハリとコシのある抜け毛であれば、ヘアサイクルが正常に機能している証拠といえます。
指でつまんだ時にしっかりとした感触があり、床と水平に持ったときに垂れ下がらない程度の強度があれば、健康な髪が自然に抜け落ちたものと考えて良いでしょう。
異常な抜け毛の3つのサイン
異常な抜け毛には、注意すべき3つのサインがあります。
①抜け毛の本数
1日に100本を大きく超える場合や、明らかに短期間で増えている場合は異常脱毛の可能性があります。枕に大量の髪が落ちている、洗髪時に多量の髪が指に絡みつくといった状態が続くなら要注意です。
②毛根の形
毛根が細くて弱々しい、膨らみがない、ギザギザと歪んでいる、根元が真っ黒になっているといった特徴が見られる場合、髪の成長に何らかの支障をきたしている可能性があります。根元が黒い場合は、成長期にストレスや血行不良の影響を受けて抜けてしまった髪と考えられます。
③髪質の変化
抜け毛が細くて短い、ハリやコシがなく産毛のような弱々しい髪が増えている場合、ヘアサイクルが乱れて髪が成長しきらないうちに抜けている可能性が高くなります。
指でつまんだ時に床に向かって垂れ下がったり、くるくる丸まったりする抜け毛が目立つ場合は、異常脱毛のサインと捉えましょう。
抜け毛を増やさない正しいシャンプー手順
シャンプーの方法が間違っていると、頭皮にダメージを与えて抜け毛を増やす原因になります。
爪を立ててゴシゴシ洗う、すすぎが不十分といった習慣は、頭皮の炎症や細菌感染を招き、抜け毛のリスクを高めてしまいます。正しいシャンプー手順を身につけることで、頭皮環境を整え、健やかな髪の成長をサポートできます。
ポイントは予洗い、泡立て、優しい洗い方、丁寧なすすぎ、そして洗髪後のドライヤーという5つのステップです。
ここでは、頭皮への負担を抑えながら清潔を保つシャンプーの基本手順を紹介します。
予洗いで頭皮の汚れを浮かせる
シャンプーの前に行う予洗いは、実は髪の汚れの7~8割を落とせるほど重要な工程です。
熱すぎるお湯は頭皮に必要な皮脂まで洗い流してしまい、乾燥の原因になるため注意が必要です。
予洗いのメリットは、髪の表面についたホコリや皮脂、スタイリング剤といった汚れを事前に浮かせることで、シャンプーの泡立ちを格段に良くできる点にあります。
髪をさっと濡らすだけでは十分でないため、指の腹でやさしくマッサージするように行うのがポイントです。髪の根元から毛先までお湯を行き渡らせるように意識しましょう。
予洗いをしっかり行うことで、シャンプーの使用量を減らせるという経済的なメリットもあります。髪が十分に濡れていればシャンプーは少量でもよく泡立つため、過剰に使う必要がなくなります。
後頭部や襟足といった見えにくい部分にもしっかりお湯を当て、頭皮全体を丁寧に予洗いしましょう。
泡立ててから指の腹で優しく洗う
シャンプーは必ず手のひらで泡立ててから髪につけましょう。原液のまま頭皮につけると、毛穴に詰まって頭皮トラブルの原因になります。
泡立てが苦手な方は、洗顔用の泡立てネットを活用するのもおすすめです。
しっかり泡立てたら、指の腹を使って頭皮を優しく洗います。爪を立ててゴシゴシこするのは絶対に避けましょう。頭皮が傷つくと炎症を起こし、抜け毛が増える原因になります。
マッサージするように指を動かし、頭皮全体を洗っていきます。この時、髪を洗うのではなく「頭皮の汚れを落とす」意識を持つことが重要です。
濡れた髪はキューティクルが開いてダメージを受けやすい状態のため、髪同士をこすり合わせないよう注意が必要です。弾力のある濃密な泡で包み込むように洗えば、摩擦によるダメージを最小限に抑えられます。
毛先は頭皮を洗っているうちに泡が流れてくるため、軽くもみ込む程度で十分です。整髪料を多くつけている日や汚れがひどい時は、一度すすいでから二度洗いをすると良いでしょう。
すすぎ残しがないようしっかり流す
すすぎ残しは頭皮トラブルで最も多い原因とされており、頭皮の炎症やかゆみ、吹き出物、抜け毛の増加につながります。
シャンプーに含まれる界面活性剤は汚れを包み込んで洗い流しやすくする働きがあります。ただし、頭皮に残ると刺激を感じたり、雑菌が繁殖する原因にもなったりする場合があるため、丁寧なすすぎは大切です。
上を向いてシャワーをあてると、お湯が頭皮全体に届きやすくなります。指の腹で頭皮を軽くマッサージしながら、生え際や耳の後ろなどのすすぎ残しやすい部分まで意識して流しましょう。
手で髪をかき分けながら流すことで、よりムラなくすすげます。時間をかけて洗い流すことが、頭皮をすこやかに保つための基本です。
洗髪後はすぐにドライヤーで乾かす
洗髪後はなるべく早くドライヤーで乾かしましょう。
ドライヤーを使う前に、タオルで優しく水分を拭き取りましょう。ゴシゴシこすらず、タオルで挟んで押さえるようにして水気を取ります。
乾きにくい根元から先に乾かすことで、時間短縮とダメージ軽減が実現できます。全体が乾いたら最後に冷風を当てることで、キューティクルが閉じて髪にツヤが出ます。
濡れたままの髪はキューティクルが開いた状態で、髪内部の水分が過度に蒸発したり、外部からの刺激を受けやすい無防備な状態です。
濡れた状態が続くと頭皮に雑菌が繁殖しやすくなり、フケ、かゆみ、嫌な臭いといった頭皮トラブルを引き起こしますし、自然乾燥は髪や頭皮の乾燥を招き、カラーリング成分の流出や抜け毛、切れ毛の原因になります。
また、頭皮が冷えて血行不良になると、髪に栄養が届きにくくなり薄毛のリスクも高まります。短髪の男性でも自然乾燥は避け、ドライヤーを使ってしっかり乾かすことが大切です。